2社購買🐯メリット・デメリットと注意点

設計部門にいると、購買部門から「2社購買したい。他社部品の使用を検討して欲しい」と要請があると思います。
設計側からすると、1社購買の方が生産数(使用数)が増え、自動化・金型化ができ、品質が安定すしてコストダウンができるので、生産を分散するなんてとんでもないことです。
ここでは「2社購買」のメリット、デメリット、具体例を説明していきます。

2社購買の 〇 メリット

1. 供給リスクの分散
一社に依存していると、その会社のトラブル（災害、倒産、品質問題など）で供給が止まるリスクがあります。
二社から調達することで、片方に問題があってももう一方で補えるため、安定供給が可能になります。

2. 価格競争の促進
サプライヤー同士が競争することで、価格や条件の改善が期待できます。
「競争原理」が働くことで、コスト削減につながる可能性があります。

3. 品質・サービスの向上
競争があることで、品質や納期、対応力などのサービス面でも向上が期待できます。
サプライヤーが「選ばれ続ける」ために努力するようになります。

4. 柔軟な対応力
一方のサプライヤーが繁忙期やトラブルで対応できない場合でも、もう一方が対応可能であれば、納期遅延などを回避できます。
特急対応やカスタマイズなど、柔軟な選択肢が増えます。

5. ベンチマークの確保
価格や品質、納期などを比較する「基準」が常にあるため、適正な取引がしやすくなります。
一社購買では「言い値」になりがちですが、二社購買では市場感覚を保てます。

6. 技術・情報の取得
異なるサプライヤーから異なる技術やノウハウを得ることができ、製品開発や改善に役立ちます。
情報収集の幅が広がり、イノベーションのきっかけにもなります。

二社購買の ✖ デメリット

1. 管理コストの増加
サプライヤーが2社になることで、契約管理、発注処理、納期管理、品質管理などの業務が倍増します。
社内の購買・調達部門の負担が増え、効率が下がる可能性があります。

2. 価格交渉力の低下
一社集中で大量発注する場合に比べて、発注量が分散されるため、ボリュームディスカウント（数量割引）が得られにくくなります。
サプライヤー側も「主力顧客」と見なさなくなる可能性があり、優遇されにくくなります。

3. 品質・仕様のばらつき
同じ製品でも、サプライヤーごとに微妙な仕様差や品質差が生じることがあります。
特に製造業では、部品の互換性や性能に影響が出る可能性があるため、標準化が難しくなることもあります。

4. 関係構築の難しさ
一社に集中している場合、長期的なパートナーシップを築きやすく、技術協力や優遇対応を受けやすいです。
二社購買では、サプライヤーとの関係が「浅く広く」なりがちで、信頼関係の構築が難しくなることがあります。

5. 責任の所在が曖昧になる可能性
問題が発生した際に、「どちらのサプライヤーが原因か」が不明確になることがあります。
特に品質不良や納期遅延などのトラブル時に、責任追及が複雑化することがあります。

6. 社内調整の手間
製造部門や設計部門が、サプライヤーごとの仕様に合わせて対応する必要がある場合、社内での調整が増えます。
結果として、業務の複雑化や非効率化につながることもあります。

二社購買の実施時の注意点

1. 発注比率の明確化
どちらのサプライヤーにどれだけ発注するかを明確にしておかないと、サプライヤー間の不満や信頼低下につながる可能性があります。
⇒例：A社70%、B社30%など、戦略的に比率を設定する。

2. 品質・仕様の統一
同じ製品でも、サプライヤーごとに微妙な違いがある場合、製造や使用に支障が出る可能性があります。
⇒例：図面、仕様書、検査基準などを統一し、両社に同じ条件で供給してもらうようにする。

3. 情報管理の徹底
価格、納期、品質、トラブル履歴などの情報を一元管理し、比較・分析できる体制を整える。
⇒例：購買管理システムの活用が有効。

4. サプライヤーとの関係構築
二社購買でも、両社と良好な関係を築くことが重要。公平な対応を心がけ、信頼関係を損なわないようにする。
定期的なレビュー会議やフィードバックの場を設けると効果的。

5. 緊急時の対応体制の確認
一方のサプライヤーにトラブルが発生した場合、もう一方がどこまで対応可能かを事前に確認しておく。
⇒代替供給体制や在庫の確保など、BCP（事業継続計画）と連携しておくと安心。

6. 契約条件の整合性
支払い条件、納期、保証内容などがサプライヤーごとに異なると、社内処理が複雑になる。
⇒可能な限り契約条件を統一し、比較しやすくする。

7. 社内の調整と教育
購買部門だけでなく、製造、品質管理、経理などの関連部門にも二社購買の方針を共有し、理解を得る。
⇒例：サプライヤーごとの違いを把握し、適切に対応できるよう教育・マニュアル整備を行う。

実施前に検討すべきポイント

製品の重要度（代替可能かどうか）
サプライヤーの技術力・安定性
社内の購買体制・リソース
コストとリスクのバランス

電気機器の2社購買例

＜購買例1　電気機器＞

対象品目：遮断器（ブレーカー）、電磁接触器、リレー、計器類（電流計・電圧計など）

具体例：　A社（国内大手メーカー）：品質・信頼性重視、納期安定
　　　　　B社（海外メーカーまたは中堅国内メーカー）：価格競争力あり

発注比率例：　A社：70%、B社：30%
　　　　　　　→ 安定供給を確保しつつ、コストダウンを狙う

注意点：　規格（JIS、IECなど）や端子形状の違いに注意
　　　　　保守部品の供給体制、保証期間の比較・確認
　　　　　同一盤内で混在させる場合は、外観や操作性の統一を意識

＜購買例2　鋼鈑＞

対象品目：亜鉛メッキ鋼板（ZAM、SGCCなど）
　　　　　塗装鋼板（カラー鋼板）
　　　　　ステンレス鋼板（SUS304、SUS430など）

具体例：A社（製鉄系商社）：品質安定、納期確実
　　　　B社（地域商社）：価格優位、柔軟な対応

発注比率例：　A社：60%、B社：40%
　　　　　　　→ 品質と価格のバランスを取る

注意点：　板厚や表面処理の違いによる加工性の差を確認し製造工程への影響を無くす
　　　　　ロットごとの品質ばらつきに注意
　　　　　材料証明書（ミルシート）の取得条件を統一

📌 共通の注意点

図面や仕様書の統一　　：異なるメーカーでも同じ仕様で製作できるようにする
トレーサビリティの確保：どの部品がどのメーカーかを記録しておく
代替性の確認　　　　　：片方のメーカーが供給停止になった場合、もう一方で代替可能か

最後までお読みいただき、ありがとうございます。